飲料メーカーの生産ラインにおいて、紙パックに付与された透明シュリンクフィルムの欠陥(穴開き・破れ・異物混入など)を自動で検出するAI検査システムです。
これまで人手で行われていた目視検査をAIに置き換えることで、検査精度の安定化と作業者負担の軽減を実現しました。
PythonおよびTensorFlowを用い、オンプレミス環境でリアルタイム処理を行う構成としています。
背景
飲料製造ラインでは、製品に付与された透明シュリンクフィルムの品質確認が重要です。
従来は、1秒間に2本という高速な生産ライン上で、作業員が30分交代で目視確認を実施していました。
しかし、作業負荷が高く、長時間の集中が求められる上、検査精度に個人差が生じることが課題となっていました。
また、製品特性上「透明素材の欠陥」は非常に検知が難しく、従来のカメラ検査では安定した検出が困難でした。
提案方針
AIによる自動検査を実現するため、撮影条件の最適化と物体検出AIの高精度化を両輪で進めました。
- 撮影環境については、照明メーカーと連携し、透明フィルム上の穴・傷・しわを強調できる照明条件を共同検証。
- 撮影データをもとに、TensorFlowベースの物体検出AIを学習し、微細な欠陥も見逃さない検出モデルを構築。
- オンプレミス環境上でリアルタイム推論が可能な構成を設計し、ラインスピード(1秒間に2本)に対応可能な処理性能を実現しました。
活動内容
- 照明条件・カメラ構成の実証実験:
透明素材の撮影において欠陥を可視化できる照射角・光量・波長を検証し、最適な組み合わせを選定。 - データ収集とAIモデル開発:
良品・不良品を含むサンプル画像を撮影し、欠陥領域をアノテーション。TensorFlowを用いて物体検出モデルを学習。 - リアルタイム処理システムの構築:
GPUを搭載したオンプレミス環境で、カメラ映像を即時解析するAIパイプラインを実装。 - 現場テスト・最終調整:
生産ライン上での長時間連続稼働テストを実施し、検出精度・誤検出率・処理速度を最適化。
結果
本システムは、検出精度98%を達成し、1秒間に2本の生産スピードにも対応可能なリアルタイム検査を実現しました。
現在、4つの生産ラインに導入されており、そのうち2ラインでは完全に人手による検査を廃止。
AIによる品質保証の仕組みが確立され、作業者の負担軽減と生産効率の向上に大きく貢献しています。
今後は、他製品ラインへの展開および照明条件を応用した異物検出への応用も検討されています。